本日の読書

心療内科を訪ねて―心が痛み、心が治す (新潮文庫)心療内科を訪ねて(夏樹静子著,新潮文庫)」完全主義,まじめな性格のひとにやはり発症例多いとのこと。そのまじめさゆえに日常の業務はそつなくこなすものの,それがゆえに心のわだかまりを晴らせないで,長年それを蓄積させてしまい,ついにそれが身体に症状となって現れるとのこと。
思い込みを捨て,なにが異常を引き起こしているのかを静かに見つめなおすことが出来るか否かが大事とのこと。
なるほどなるほど。でもひとすじなわではいかない症例が,この著作にはたくさん。興味津々。
しかし,顎関節異常とそれに伴う顔面のゆがみが,その原因が心身症だとはなかなか気づけなくて,単なる噛み合わせの異常だと思い込んでしまったあまり,奥歯を削ったり抜いたりを繰り返して口の中がぼろぼろになってしまったという症例は気の毒過ぎ。そんな,歯がぼろぼろになる前にもっと早く心身症ということにに気がつく手立ては無かったものなのだろうか。
ともかく,どこで,思い込みを捨てられるか,なんだな。

病気というものは,各人が肉体的,精神的,社会的に生きてきた人生体験の結晶である。・・・充分に話し,充分に聴くということこそ,心身医学の基本なのであり,それだけですでに大きな治療が行われているのではなかろうか。・・・本来は,患者の訴えや嘆きをまず受け止めるのは家族の役目だったのかもしれない。ところが今は小家族が多くなり,大抵みんなが忙しい。まして症状が慢性化して訴えがくりかえしになってくると,誰も真剣に耳を貸してくれない。患者としても,結局は専門医に細部まで注意深く聴いてもらって,正しい診断を受けたいと願って病院へ足を運ぶのである。・・・しかし,現実では,・・・(使った「薬品」による点数制度の絡みもあって)患者一人一人に充分な「時間」が使われているといえば,とてもそうとは思えない。・・・一人何点と頭打ちにするのではなく,30分何点,一時間ならその倍,という風に時間によって加算されるべきものではないかという声も多く聞いた。