本日の映画鑑賞

「雷撃隊出動」*1。1944年東宝。リンク先にて”敗戦色濃い1944年12月に公開された”とあるとおり,前半は,日本軍の現状が”窮地にある”ことが,率直に伝わってくる内容になっている。
椰子の木あまた茂る,南方の,わが国陸上基地の戦況は,もうすっかり追い詰められていて,いまや敵米軍機グラマンやP−38がつぎつぎ押し寄せてきて,しばしば空襲を許してしまっている状態になっている。
わが日本軍は,もちろんそれに対抗して,本心は零戦でどんどん出撃して,空中戦で,敵機を撃ち落して成敗したいところなのだが,あいにく零戦の補充が不足しており,出撃したくとも出撃できない。飛行気乗りはたくさんいるが,肝心の飛行機が無い。したがって,空襲時には,ただひたすら地下壕に逃げ隠れて耐え忍ぶだけ,という,軍隊の窮状が,映画の上で,率直に描写されている。
要するに,わが国の軍隊が,すでにぽんこつ状態で,もうまともに戦争を続行することができないことを,暗に示している内容になっているわけです。昭和19年という時期に,こういう映画が,それも海軍省の協力の下に,製作されていた,ということが,結構意外でびっくりしました。もしかしたら,この対米戦争を早めに切り上げてしまいたいという,海軍の良心がどこかに潜んでいる映画なのかもしれないですね。
もちろん,この映画の目的は,時局柄,やはり”戦意昂揚”にあるわけだから,映画末尾近くのクライマックスの戦闘場面になると,やはり色彩が国策調に変わってくる。夜の海上戦。敵艦隊による弾雲がつぎつぎとはじける空中を,わが日本軍の精鋭は,一式陸攻らしき機でぐんぐん突っ込んでいて,そして射程距離に入ったところで,水面に雷撃をどぶんと放ち,敵航空母艦の片舷に命中させ水柱を立てさせて,敵母艦をつぎつぎと破壊していく。そして最後には,体当たりで敵艦に突っ込み,見事撃沈を果たしてしまう*2という,まことに命がけで,そして戦果赫々たる映像を,目の当たりにすることになるのだが。*3 
このように,映画前半の日本軍の窮状の描写と,そして映画後半の,いかにも戦意昂揚調なこの両者が,なんだかアンバランスな仕上がりになっていて,そういう意味で,戦時資料として観ていて興味深かったです。

*1:http://www.nihon-eiga.com/prog/105804_000.html

*2:おそらく,昭和19年から始まった”神風特攻隊”による戦果に呼応した映像でもあると思われるが。

*3:もちろん,この辺の映像は,円谷監督の特撮によるもので,モノクロ映像によるこのシーンは,なかなか表現がリアルにできていで,さもありなんという気がする。すごい。