KITARAにて

昨夜夕刻十七時より「ボロディン弦楽四重奏団結成60周年記念コンサート」拝聴す。KITARAの小ホール(453名定員)ほぼ満席状態なり。95%くらいは埋まっていたのではないかと。
プログラムはすべてロシアもの。ボロディン:弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調 作品11/ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第3番 へ長調 作品73。
アンコールにて2品、シヨスタコ−ビチ「3つの小品」ストラビンスキ−「エキセントリック」だったと記憶せり。どちらも知らない曲だったが、めっぽう楽しい曲で、会場の雰囲気も即座に和やかになりぬ。コミカルな曲をひたすら渋い真剣な面持ちで演奏する四人の姿に深い感銘。
ショスタコーヴィチ#3は、交響曲第8番のテーマをもとに創作されたもので、たしかに交響曲と相似するように、5楽章構成。最終楽章の末尾で、希望の光がともるようなほの明るい音色で終わるところなども似ていたように感じた。もちろんこのカルテットが初演を担当した曲でもあって、つまりこのホールで鳴り響いたのはショスタコーヴィチ直伝の音楽ということでもあります。スターリンによる粛清政治,東ヨーロッパ陸上戦,終戦,冷戦,そしてソ連の崩壊,これらを一身に背負ってきた生き証人のごとき演奏とも言え,厳粛な思いなしに聴くことができない。
チェリストのベルリンスキーさんは、1945年結成当時からのメンバーで今年で80歳になるという。舞台ソデからあらわれてきたときは、背筋はやや曲がり気味で、いくぶんくたびれたような印象を感じたものの、ひとたび椅子に座って、チェロのエンドピンを床に固定すると、とたんに、さきほどまで曲がり気味の背筋はぴんと伸び、毅然たる趣で、右手に握った弓とフレットにおかれた左手の指はたっしゃに動いて、たくましい豊かな低音を会場いっぱいにひびかせてくれた。底知れないプロ意識の高さに恐れ入るばかり。