本日のBGM

「アスラエル交響曲」(スーク作曲ターリッヒ指揮チェコフィル1952,スプラフォン)。中古屋で発見。1990年発売のCDだからもう15年も経ってるにもかかわらず,再生に障害なし。
名曲だと思うが,響きそのものはいかにも地味。けっしてポピュラーにはなりえない曲だと思う。
こういう場合は,作曲の背景を頭に入れてから,その音に耳に傾けて,音楽の語るメッセージに真摯に静かに耳を傾けていくほうが,むしろ,とっつきやすい。ブックレットによると,まず,ヨゼフ・スーク(1874−1935)。1898年,ドヴォルザークの娘であったオティリエと結婚。当時から作曲家としてキャリアを順調に積み重ねる。「弦楽セレナーデ」「愛の歌」「交響詩プラハ」等をこの当時に書き上げる。しかし,1904年,恩師ドヴォルザークの突然の死にショックを受ける,そしてそれをきっかけとして,自己の全力を結集した作品を書き上げることを決意。それがこの交響曲であった。しかし,それを第4楽章まで書きあげたところで,今度は,愛妻オティリエが,31歳の若さで,父の後を追うように,逝去してしまう。このことには,ドヴォルザークの時以上に,計り知れない慟哭を受ける。だが,そのショックを乗り越えようとするように,こんどは,この交響曲を,新しい構想の下に書き換えて,最初から手直しして作り上げることになった。そして,ついに1906年に全曲を書き上げ,完成する。「アスラエル」という表題はこのときに命名された。○第1楽章 アンダンテ・ソステヌート:「運命」と「死」の二つの主題を中心楽楽想として,その間に幸福な思い出が点綴される。 ○第2楽章 アンダンテ:性格的な葬送行進曲 ○第3楽章 ヴィヴァーチェスケルツォ,死の諧謔と甘美な追憶。○第4楽章 アダージョ(オティリエの肖像画) ○第5楽章 アダージョ・マエストーソ(冒頭の楽章の気分への復帰,過酷な現実,悟りと光明,至福感をもって,ひそやかに終結)。
ここまで,頭に入れてから聴くならば,ようやく,この地味で,沈鬱な交響曲が,なにかしら,言い知れぬ厳粛さと,親しみをともなって,耳に響いてくるような気がしてきます。そういう意味で名曲だと思います。渋い叙情的な美しさも絶品。ちなみに,斉諧生音盤志平成15年5月17日付記事によると,クーベリック盤が緊張感に満ち満ちた名演奏との由。