今年の印象盤

とはいってもかつてほど音盤を買わなくなってしまったのですが,その数少ない今年の購入歴から選び出すとなると,添付画像の2種です。
ブルックナーの後期交響曲が2種並びました。
(画像左)ブルックナー:交響曲第9番(BBC響/グッドール)(1974)ブルックナー#9(グッドオール指揮BBC響)
なんというのか,全3楽章すべて,ゆったりとしたテンポで一貫していて,特に第一楽章なんかは,最後のコーダにたどりつくまでは,オーケストラが美しく抑制され続けていて,それがなんとも,「枯れていて」,「力の抜けた感じ」を醸し出しており,かといってゆるゆるでもなくて,ぴりっとした緊張感が途切れることなくつづいているのがよく伝わってきます。それはおそらく真摯に一生懸命に演奏されている証だと思われます。
そして最後のコーダ部では,オケ全体がここぞとばかり爆発して,余すところ無く慟哭的表現を聴かせてくれて,見事です。よくぞここまでエネルギーをためてくれたとばかりです。
この,9番交響曲という曲の想念に,ぴったり沿った解釈として,秀逸な出来だなと感じながら聴くことができました。
uniohさんとこでもバルトークラジオ用音源としてご紹介されていました。あれからCDでも買いましたのです。深謝です。
ネット上ほかで,この盤が話題になってるのは,あんまり読んだことは無いけれど,もっともっと聴かれても良いブルックナー#9のように思っています。
(画像右)ブルックナー:交響曲第8番(クナー指揮ミュンヘンフィル62年ライブ)
待望の正規音源盤。これは期待を裏切らず,秀逸でした。
まず,ドキュメントとして,会場の空気が録音から的確に伝わってくることがすばらしいです。一発勝負のライブ録音なので,オーケストラとして,音の規律そのものは,なんとなく荒い感じはするのだけれども,ただ今回の音質向上のおかげで,クナの癖のひとつでもある,「足踏み音」が,たいへんよく聴こえてきます。そしてそれがひとつの音楽的真実を,よく抉り出してるように思いました。例によって曲想ががらっと変わる直前に,足音がぱたっと踏み鳴らされるわけですが,そのたびに,オーケストラと,会場全体の空気が,ぴりりっと引き締まる様子が,伝わってくるように思います。そして,それが,いまにも崩れそうで崩れない,絶妙なバランスで聴かせてくれて,この長大な交響曲を最後までひっぱって聴きとおす原動力と化さしているように思われます。
まあ,音楽とはまた別の次元の「足音」「雑音」に囚われてしまって,どうしたんだい,どっかおかしいんじゃないかと笑われそうですが,一聴してふとそんなことを思ってしまったのでした。それをメモしてこうして示してみました。
もちろん演奏としても,ものすごく感動していまして,発売以来これまで何度も耳を傾け続けております。
なによりも買って嬉しかった盤です。