書く

とかく空白は埋めたがるもの
とかく空白は耐えがたいもの
子供のころ漢字練習ノートの右隅に
小さく「どけどけ」と記してみた
何の意味もなく
そこに「どけどけ」のフレーズ
書いた自分でも意図が何ら読み取れない
そんなちゅうぶらりんなおかしさに
にこにこ満悦していた
ある日そのノートを机の上に
置きさらして置いて
しばらくして戻ってきたら
悪友の落書きでまっくろに汚れていた
「どけどけ」の後に続いて
水戸黄門のお通りだ」
満悦のみちしるべが
一瞬にして破られる
意味が付随することの
その味気なさ
切なさにがっかりして
泣きそうになりながら
ノートをかばんの中にしまい
学校を後にした
とかく空白は埋めたがるもの
とかく空白は耐えがたいもの