本日の読書

荷風のあめりか (平凡社ライブラリー)(末延芳晴著)」再読。ニューヨーク滞在中にカルーソーのオペラ生舞台等体験,まさしく当時最先端の音楽芸術と文化に身を置く。そして自分自身が生まれた日本という国との激しい温度差を思い知らされ,時には絶望を余儀なくされる。しかしそれでも,「書く」という行為を繰り返すことで堪える,乗り切る,やがてそれは「断腸亭日乗」となり,後年の人がよく知る荷風となっていくわけです。アメリカ時代からすでに荷風はやっぱり荷風なのでした,ということが理解できます。
死んで50年近く経つのに荷風というおじさんは侮れないです。古めかしい文章ばっかり残している割には,発想の柔軟さを内に潜めていることがすごい。このことはすでに戦前に石川淳氏あたりからも指摘されていたところだったかと思う。