本日の読書

罪と罰 (まんがで読破)「まんがで読破『罪と罰』(イースト・プレス社)」
ナイスな漫画化だと思います。文庫本一冊のなかにおよそのあらすじと登場人物の苦悩ぶりを的確にわかりやすく描いてくれてます。ていうか,これを読んで散文による原作の「構造」が頭の中でうまく整理できたような感があります。そういう意味で読んで嬉しいです。☆☆☆☆☆
なお,この漫画版の場合は,結尾部(ラスコーリニコフがシベリア送りになった場面)で,21世紀的な解釈が加えられています。要約すると,ラスコーリニコフは「社会正義のために」金貸しを殺害して,そしてただの殺人犯になりさがってしまったということと対比させて,国家が「社会正義のために」戦争やテロを起こしそして国家自身をも台無しにしてしまう,この2つの関係は相似である,という図式です。「正義」と「正義」がぶつかりあう,そしてこの両者は判りあうことができなくて,ついに決裂し,惨憺たる地獄絵図になってしまう。そんな人間の性そのものを,ドストエフスキーは19世紀の時点でラスコーリニコフというキャラクターを借りて描いてしまっていたということではないかと思われます。