入院日のこと

○3月16日 8時
朝方、オフィスの上司の車に乗せてもらって、ふたたび岡崎市民病院にゆく。今度は専門の整形外科の診断を受けるためであった。
運転席で上司つぶやく。
「夕べ寝られなかっただろう」
「まったく寝てません」
「むりやり(長野から)自力で帰ったりするから悪化するんだ」
「ちがいます。自力で運転したのは診療所の指示に従ったまでです」
スノーボードもうやめろ、トシなんだから」
まあ、そのとおりだなとは思うが、返事は保留した。スノーボードをやめるかどうかは、いま考えている場合じゃないの!
病院の受付ご到着。夕べもらった指示書を受付に提示する。
まず、車いすで移動しながら、血液検査、血圧検査、レントゲン撮影、CTスキャンといった検査を受ける。すべて自分で車いすで移動しながら、検査室をひとつひとつハシゴする。慣れない車いす移動はなかなか疲れます。
ようやくすべての事前検査をすませて、整形外科の待合い室にて、主治医からのお呼びを待つこと約2時間かかった。
「脛骨が強い力でねじれて粉砕骨折してますね。細かく砕けて、足そのものが短くなっています。また、腫れもひどいので、まず、一週間くらい牽引して、腫れがひいたタイミングで手術をすることになります。本日さっそく入院してもらいます」
・・・手術になるんだ。そもそも骨折も入院も手術も人生初めてです。なんだか怖いが、見せられたレントゲン写真の惨状を見せつけられると、もはやとりかえしはつかない。ただただ主治医の指示に従い、なるに任せるよりほかないんだなと思う。
○3月16日 16時
いよいよ病室あてがわれる。個室よりは安いからということで、4人部屋に入る。とりあえず、痛む足をがまんしながら、シャワーを浴び、身体を拭いてからベッドに横たわった。
18時頃、主治医来る。いよいよ牽引処置の始まりです。左足のかかとに麻酔針をブスリと刺される。感覚がひりひり麻痺したところで、細いドリルでかかとに穴をあけ、鉄針を貫通させたみたい。麻酔のおかげでたいして痛くはないのだが、かかとの骨に異物をむりやりさしこまれた感覚がすごい気持ち悪い。
鉄針の両端にワイヤをとりつけられ、ワイヤーの先にはずっしりしたおもりが下がっている。足がひっぱられつづける。しかし、ひっぱられているおかげで、骨折の痛みは軽くなったように思う。
しかし、この状態では、ベッドから起きあがって、トイレに行くことすらできない。小用はシビン、大の方は平べった差し込み便器で行うことになります。すべて看護師さんの手を借りなくてはなにもできない。寝たきり生活の始まりです。こんな状態で一週間以上過ごすって、どういうことなんだろうとひたすら不安になるばかりでした。
さいわい、koboを持ち込んでいたので、約200冊のテキストを自由に読めるのは助かりました。運動ひとつできない状況だし、患部もじくじく痛み続けているので、まともに寝られる状況ではない。唯一気分を紛らすことができるのは、テキストを黙々と読むことだけでした。こうして、寝たきり人生の夜は更けていくのでした。