松之山でのこと

時間がようやく空いたのでこの隙に気張らずに適当にログを書き残そうと思う。レポートとして書くとなると却って緊張して書きづらいので、思いだしたことを飾らずにあらっぽく書きます。5月8日、新潟十日町市松之山にて安吾まつりに遊びにいった時のことです。
自宅を出発したのは前日の7日(金)夕方のことになります。盛岡の自宅から出て東北自動車道で南下して、古巣福島郡山市まで行きました。市内のホテルで一泊して疲れを癒しました。松之山に向けて出発したのは翌朝7時頃のことです。今度は磐越自動車道でどんどん西進していって、新潟市を経由して、十日町まで行きました。時間にしておよそ5時間かかりました。
松之山手前の松代に到着したのは、だいたい正午近くになってからです。ちょうど小腹も空いていたので、松代駅前の蕎麦屋「善屋本店*1」に立ち寄って、盛り蕎麦を一枚注文しました。
茹で上がった盛りそばをすすりながら店内を見渡してみる。するとどこかで見た風貌の方がカウンターに座ってることに気がつく。あ! 村山さんです。東京安吾忌そして桐生安吾忌でも遭遇した、安吾の甥に当たる方です。思わず奇遇に驚きました。勘定を済ませるついでに村山さんと軽く挨拶を交わしてみる。村山さんでしょうか? と問いかけてみると、すぐに気がつかれた様子です。わたしの顔は覚えておられたみたいです。そういえば桐生では酒の勢いでずいぶん絡みました。それで覚えていたのかもしれません。挨拶は簡単に済ませて、また、松之山で逢いましょうと言うことで、善屋本店を去りました。
この遭遇の件についてはツイッターで記録しておきたい。そんなことを思ったので、松代道の駅に立ち寄って、その辺のベンチで携帯をいじりながらこんなこと*2をツイットしてました。すると、またこの道の駅でも、村山さんとばったり遭遇しました。あらあら二度目の遭遇です。奇縁が続く正午でした。
そんなわけで、道の駅であれこれツイットしながら時間をつぶして、気持ちを落ち着かせてから、いよいよ松之山に突撃です。うねくね曲がりくねった道路をたどって、大棟山美術館を経由して、本日の宿泊所「おふくろ館*3」に立ち寄りました。ここの駐車場に車を停めて、それから大棟山美術館に向かいました。ここでは新潟安吾の会の福地さんと斎藤さんと遭遇しました。みなさん元気そうです。
14時からは会場で、今日のイベント安吾まつり開催です。はじめに地元の有志で「風と光と二十の私と*4(後半部のみ)」の朗読でした。だいたい3名くらいでかわりばんこしながら名作を淡々と読み上げてました。
それが終わると、関係者による諸々挨拶や祝辞の読み上げ、そして会長の村山さんによるスピーチ等を聞きました。
そして、次は綱男さんによるトークショーです。お題は「安吾のいる風景その後」というもので、これまで写真家として撮影した写真をプロジェクターで紹介しながら、安吾のひとり息子として半世紀過ごしてきたことをふりかえるという内容でした。
トークショーのあとは、琵琶奏者古屋和子さんによる「黒谷村*5」弾き語りです。これは初期ファルスとよく呼ばれるこの時期の作品の文章を淡々と読み上げながら、琵琶をはじくというものです。これは、ぱっと聴いてみて、・・・う〜ん、やっぱり難しい作品だと思います。原作そのものが、つかみどころが無いせいもあると思います。だけど、この黒谷村という作品のあちこちには、この松之山の「風景」が色濃く反映されてます。語りを聞きながら、松並木の光景と、どこまでも連なる山々の光景と、昭和初期の人里離れた山村の光景がみえてきたような気がします。そういう意味では感銘深いものがありました。
黒谷村のおまけとして、「俊寛」の弾き語りもご披露いただきました。こっちは琵琶の弾き語りとしてはおなじみのテーマということで、会場の反応としては、こちらのほうが理解がよく行き届いたような印象を感じました。
弾き語りが終わる頃には、すでに陽が落ちようとしてました。おまけに開けっ放しだったので、夕方の冷気が大棟山のなかに染み渡ってきてて、かなり肌寒かったです。
というわけで、イベントはひととおり終了になりました。時刻としては、おおよそ17時頃になってました。
18時からはいよいよメインイベント(?)の懇親会です。マイクロバスにのって、会場は件の「おふくろ館」へ移動です。いったん温泉に浸かったりして、座敷にみんな集まります。
ここから先は、安吾さんとかそういうのは適当で、ひたすら飲み会です。この時期の松之山は山菜が豊富です。こごみぬた、こしあぶらおひたし、たらの芽天ぷら、しどけ、山うど等々、山菜づくしです。肉類が全くないのに、ボリューム満点でした。山国らしいもてなしでした。また地酒「越の露」にも満足でした。
ちなみにわたしも秋田から日本酒を献上しました。秋田県五城目町は福禄寿酒造「純米大吟醸隠れひこべえ」です。調達先は、秋田市川反「酒屋まるひこ*6」です。秋田を代表する酒屋です。店内は厳格に温度管理されており、照明も最低限度の光度に抑えられています。ここの店長は口がたっしゃで気の利いたコメントをぱっと返してくれます。「”要冷蔵”とラベル貼られているけど、常温に一週間ぐらいおいといて大丈夫?」「火入れ一回の酒は、要冷蔵ということになっているのですよ。メーカーからの要望です。だけど一週間くらいなら常温でも大丈夫ですよ。これがもし、一回火入れではなくて、”生酒”の場合は、常温は禁物ですが」それを聞いて安心しました。これなら自動車で遠路はるばる新潟まで運んでも問題はなかろうと思いました。そういう日本酒を会場で開栓して納得です。たしかにうまいです。甘口で、純米酒らしいどっしり濃厚な味わいでした。献上は正解でした。めでたしです。ちなみに、五城目町安吾さんとの恋愛関係で有名だった矢田津世子さんの生まれ故郷です。矢田さんにちなんで五城目の日本酒を持参した次第でした。
そんなこんなで、結局呑みすぎてしまいました。途中までは席をあちこちうろついてあちこちの人と絡んだような気がします。越の露の醸造元の社長さんともことばを交わしたような気がします。高橋さんとも絡んだような気がします。カール・ベンクスさんとも絡んだような気がします。だけど、呑みすぎて細かいことまではよく覚えてません。
気がついたら、朝になってました。宿酔で頭が痛かったです。だけど、枕元でジーンズは綺麗にたたまれているし、ポケットの中を見ると落し物もしていない模様です。なんとなくほっとしました。
酔い覚ましということで、熱い温泉に浸かって、それから大量に麦茶を飲みました。水分を補給しているうちに気持ちがだんだん蘇ってきました。これで無事に帰れそう、そう思いました。
それから10時間かけて盛岡へ帰宅したというわけでした。
自己中心的でずいぶんとログらしくないログ以上。
だけど、あとで何か思い出したら、綱男さんのトーク内容とか、関係者のスピーチ内容とかを具体的に書き足したいと思います。思い出すことができれば、です。