土曜日

○上京して品川の「原美術館」に行きました。かねてから関心を抱いていた「ヘンリー・ダーガー展」鑑賞してきました。その世界は,おおむね当初予想していたとおり*1でしたが,・・・
ただ,絵画実物の迫力はたとえようなしでした。その台紙は茶色く色あせていて,過ぎた時の流れを感じさせてくれるけど,その表面に描かれたイメージといったら,もう,巨大で,色華やかな花園の中に,とにかく,少女,少女,少女,無数の少女のイメージが乱舞しまくってました。
とにかく,その「量が」すごい。世捨て人同然な生活の中で,「黙々と」「自分のために」「少女への妄想」を描くことで創作をし続けたその「エネルギー」「心の闇」はいったいなんだったのだろう。異様過ぎて,そして絵そのものの波動が強くて,声が出ませんでした。
○それにしても,ダーガーという人は,いまでいうアスペルガー症候群だったのでしょうか。作品目録記載の年譜によると,

8歳でカトリック系児童施設に預けられます。地元の公立学校に通っていた時期の成績は良かったと伝えられますが,その後,感情障害の兆候を来たし,重度の精神遅滞児童を収容する施設に移されます。知能障害の無かったダーガーは,この施設で十分な教育を受ける機会を与えられず,孤独の中で代替世界として,空想の王国を築き上げて言ったと考えられています。

要するに,知能的には,ぜんぜん「普通」だったものと察せられます。もし,めぐり合わせがもうすこし良ければ,ひきこもりなんか封じてしまって,ごく普通に生涯を過ごすことも出来た人なのではないかと察せられます。その代わり,このような膨大なアートは産まれなかっただろうけれども。
○「BLENGINS(子供たちを慈しみ守る動物)」というテーマで,ダーガーが残した「動物」のイメージも展示されています。なんか,ウミウシタツノオトシゴがごっちゃになったような奇妙な動物が描かれています。しかも頭部が少女だったりします。いったいなんなんだろう。
○あと,ダーガーが過ごした「部屋」写真も何枚か展示されていました。これは,はっきりいって「ごみ屋敷」です。広さにして6畳くらいのスペースの中に,彼が創作した「少女アート」の山と,15巻分もの「小説」と,それとゴミ捨て場から拾ってきた紙切れとかの山です。素人目からみたら,単なる「ごみ屋敷」以外のなにものでもありません光景でした。もしネイサン・ラーナーというデザイナーに託されていなかったら,早晩処分されていたでしょう。
○あまりにも散らかっている室内なので「寝るスペース」も無かった模様です。本人はどうやって夜を過ごしていたかというと,なんのことはない「椅子に腰掛けて」「うつらうつらと」睡眠をとっていたようです。
○ともかく,ダーガーの作品は,その「心の闇」「閉鎖性」「ひきこもり」「非コミュニケーション」とかいった現代人らしい心のテーマとオーバーラップしてきて,それが見る者をとらえて離しません。悪夢に悩まされそうです。
○ちなみに,ダーガーの作品は,いまでは1作品につき2000万円くらいの鑑定がついたりしているみたいです。価格がつくのはわかるけれど,それだけの金を払って「飾りたくなる」作品なのだろうか。うーんとうなるばかりです。