少しずつ

「白き瓶」読む。やっと200ページ。伊藤左千夫と歌詠みのスタンスでの反目状態は依然として続く。伊藤との間のそんな,心の緊張状態が続くまま,こんどはその写実的な描写力を,小説表現へと移していくまでのあらすじ。まだ「土」には至っていない。
秋にふさわしい歌を文中からメモ。「稲かりてさびしく晴るる秋の野に黄菊はあまた目をひらきたり」「秋草のにほえる野辺をみなそこと天つ狭霧はおり沈めたり」「秋雨のいたくしふれば水の上に玉うきみだり見つつともしも」 なんとなく,秋が似合う歌人に思います。写実的な表現で,秋の光景を57577で切り出すと,そこには意図せずして,寂しい味わいがじんわりとにじみ出るからでしょうか。もちろん,春,夏,冬でも,それは同じなんだけれども,だけど,激しかった夏が終わって,すぐ後に荒涼たる冬が控えている,秋の方が,歌にとって良い素材が多いということなのかな。
まだ最後まで読み通してないからなんともいえないけど。
そういえば,googleの地図にも,彼の生家が,テキスト付きでしっかりと写っています*1。茨城の石下町というところだそうです。堅固な防風林に囲まれていて,そして道路側には立派そうな門が構えられているように見受けられます。