本日の読書

日本の町 (文春文庫)丸谷才一山崎正和著,文春文庫)」小樽,宇和島,長崎,西宮 芦屋,弘前,松江,東京についての都市論対談(昭和55年〜62年)。
およそ20年前,阪神と阪急は,こんな感じで論じられていたのですね。西宮 芦屋の項にて。

山崎:・・・阪神と阪急が,実は阪神文化の2大骨格なんです。大雑把にいいますと,阪神間を興した勢力に2種類あって,近世以来の土着の勢力と,近代になって大阪経済及び神戸経済の力にひかれてよそからやってきた人の,二つの勢力に分けられるからです。・・・そういう図式でいいますと,阪神は,阪神間の土地持ちとお酒屋さんが資本を出してつくった電車なんです。ともかくいちばん古い。阪急電車は,いうまでもなく小林一三ですが,この人は甲州商人でして,よそから来た人の典型です。・・・この二つが,いい意味でも悪い意味でも2種類の文化を作り上げているんです。・・・まず,阪神にとってマイナス点をいいますと,たとえば阪急はあとから来たせいもあるんでしょうが,全部高架で走っていますが,阪神は,ずううっと地べたの上を走っています。・・・タクシーの運転手さんは踏切で止められてみな怒っていますが,なかなか直そうとしない。・・・つまり阪神は非常に保守的です。・・・(いっぽう阪急は)阪神間文化を爆破するようなものだったのです,当時は。・・・(その阪急の)天才小林一三が非常に不思議な文化を作り上げた。大正リベラリズムが持っていたハイカラさと,恐るべき大衆文化とを直結させたのです。たとえば宝塚。あのハイカラさと泥臭さ,これは不思議なもののミックスでしょう。・・・他方で,ターミナル百貨店を大阪に作り上げ,そこで何をやったかというと,ソーライというものを発明した。
丸谷:ソーライ? なんです,それは?
山崎:つまり,ソースライスなんです。白いご飯にソースだけかけて食べて帰ってもいいという食堂を作ったわけです。

へ〜,そうなんだ,それほどまで根が深いものなんだ,なるほどなるほど。