本日の読書

「三島由紀夫」とはなにものだったのか (新潮文庫)三島由紀夫とはなにものだったのか(橋本治新潮文庫)」 あの三島が,松本清張を拒絶していたということは初めて知りまそた。

数年前に,中央公論社の社長だった人から不思議な話を聞いた。その昔,中央公論社で「日本の文学」という全集を出そうとしたとき,中央公論社側には「松本清張集」という一巻を立てたいという希望があったのだそうだ。ところが,編集委員だった三島由紀夫が「絶対にだめ!」という反対をして,それが出来なかったのである。

著者の論証によると,二人とも現実社会を題材として作品を描く,という点では共通しているが,しかし,三島は現実を題材としつつも,「金閣寺」のように,どちらかというと観念的な,むしろ現実離れした構築物を作り出してしまうのに対し,松本清張は現実を題材としていて,かつそこに息づく人間の生の感情を,もろに掘り起こすことが出来て,そしてより真実味の深い小説表現を成し遂げてしまう。そのことをどうも三島自身でも自覚していたみたいで,ために松本清張への嫉妬感情も強く,上記のとおり文学全集等への収録についてはついに賛成することはなかったのではないかとの読み。そういうことがあったのです寧〜。