防空壕

秋田の実家のそばにも,丘の中腹に掘られた横穴式のが2つばかり残っています。ただし,”秘密基地”として少年の遊び場になったことは一度もありません。なぜならそこはゴミ捨て場として使われていたからです。
誰が管理するでもない古い古い横穴です。ごみなんかもう捨て放題です。それにいちいち分別する必要もありませんので,こんないいものはありません。生ごみやら,プラスティックごみやら,古着やら,粗大ごみにいたるまで,なにからなにまでごったまぜにして,近所の住民が,夜な夜な訪れては捨てていったようです。だから真夏の暑い日なんか,防空壕の入り口に近づいただけで,周りの空気が,ひどい臭いのなんのって,半端ぢゃありませんでした。それにたまりにたまったごみのおかげで,なにかしらグロテスクな雰囲気もただよっていて,いつしか,誰もが近づきたがらない,地元ではワーストなる地帯として有名になってしまったと記憶しています。人間の怠慢をかき集めた汚くて臭いそういうほら穴なんか,いくら元気な子供でも,まかりまちがっても,”秘密基地”にしようとは思うわけありません。ごみのおかげで,秘密基地化は免れたわけであります。
でも,こういうのも,なんか問題だなあ。ごみだらけの単なるほら穴なんかよりも,少年の冒険心をくすぐり,はぐくむであろう旧防空壕の方がなにかしら健全に思えるのはわたしだけ? 
合掌。