どたばたしながらも

ワーグナー《ジークフリート牧歌》 [DVD]」(クナッパーツブッシュ指揮VPO,1963年,TDK)漸くDVDプレーヤ復活。無事鑑賞せり。画質はそれほど悪くないです。以前に出た”ワルキューレ第一幕@ウィーン芸術週間1963~ クナッパーツブッシュ&ウィーン・フィル [DVD]”と比較するならば,まあ劣るかな,しょうがないかな,というところでしょうか。
しかし,いやはや文句なし名演名映像でした。1963年当時,クナは60年に患われた大病のためずいぶん痩せ細っていて,けだし体力は落ちてしまっていて,その指揮ぶりは,一見静寂静謐ではあるのだけれども,しかしこの”ジークフリート牧歌”というゆったりとした音楽の起伏と併せるかのように,その指揮棒とボディランゲージが放つ表情はたいへん豊かで雄弁です。指揮棒が音楽を放っている,そんな錯覚すらむべなるかなです。
さて,この曲は全部で20分くらいであって,冒頭からゆったりとした主題をとっかえひっかえつつ,少しづつ音量を上げて昇り詰めていきますが,そして,だいたい11分経過あたりで弦楽器が激しく動き出してまず一つ目の頂点に達しますよね。*1その箇所での,クナとVPOとの間にみなぎる緊張感は見ものであります。クナの動きはあいかわらず少ないのだけれども,なにかしら,”この箇所は外してはならない!”といいたげなぴりぴりとした雰囲気が感じられます。
そしてスコアの一連の進行を終えて,いよいよ曲の末尾,最終音が鳴り止むと,クナは両手のひらをはらとひろげて”お開き”のポーズをとるのがすごい印象的。精魂を傾けに傾けた演奏を成し遂げておいて,なおかつこのように軽く〆るこのセンスが,なにかしら粋で,観ててしびれるんですよね。クナにしかできません,こんなこと。
すばらしすぎです。なんといってもクナの指揮姿に接近した映像が,たくさん収録されているのが強みです。クナ好きなら文句なしのおすすめDVDでありまするです。
というわけで,鑑賞記念にSyuzoさんとこにもトラックバック送信します。ありがとうございました。

*1:それが一段落ついた後でホルンとクラリネットがほのぼのと歌い交わしますわけですが。