美術展メモ

ヘンリー・ダーガー展」というものが原美術館(品川)にて展示されています。7月16日まで展示されているとのこと。品川なら,便が良いので,上京する機会があったら立ち寄ってみようかなと思っているところです。
案内チラシの紹介文を要約してみると,まず,ヘンリー・ダーガー,1892年シカゴ生まれ,1973年没。幼くして母と死別。父も病気がちだったので,児童施設に預けられて育つ。しかしそこで「感情障害」の兆候を来してしまい,また,別の施設に預けられる。17歳で施設を脱走。それから,81歳で世を去るまでの半世紀以上もの月日を,病院の清掃や皿洗いの仕事に従事しながら過ごす。19歳ころから11年くらいかけて長編小説を執筆する。表題は『非現実の王国として知られる地における,ヴィヴィアン・ガールズの物語,子供奴隷の反乱に起因するグランデコ−アンジェリニアン戦争の嵐の物語』というこれまた長いもの。量にして15,145ページもの超大作だそうな。そして1930年頃から,今度は,この長編小説を題材とした,絵画の制作にとりかかる。しばしば,新聞や雑誌などから少女のイラストや写真をトレースすることにより,独自の絵画を制作しつづけた。「少女」が描かれることが多く,少女たちが無邪気に楽園で戯れているような情景から,「拷問」や「殺戮」とかいった,残酷な情景にいたるまで,そのテーマは多彩とのこと。
上記の紹介文や,あと,ウィキペディア等の記述を読んでいて興味深い点をまとめてみると,下記のとおり。
○15,145ページもの膨大な長編小説を,「読者を前提としないで」黙々と執筆したこと。絵画も同様で,生前は,それら膨大な作品群をまったく発表しようとはしなかったこと。要するに,生前,傍目には,身寄りの無いただの老人でしかなかったが,亡くなってから,室内を探してみたら,膨大な作品が発見されて,それから評価が始まったとのこと。それって,そもそもの制作の原動力っていったい何だったのでしょうか。このこと自体が不可解なこと。
○「戦争」について扱われていること。奇しくも制作年代が,2度の世界大戦を挟んでいるので,おそらくそこからインスパイアを受けたのかなと察せられること。しかしながら,アメリカ在住だったので,その戦火を直に見たわけでもなくて,新聞や雑誌による情報から,想像を際限なく膨らませたものであろうこと。
○「少女」が制作の主題であり,そして,自身の「ひきこもり」同然な生活の中で,その妄想を際限なく膨らました産物なのではないかと察せられること。そして,そこに,人間の性としての「危うさ」を感じてしまいそうなこと。たとえばこれがもし絵画の上での制作からはみでていたりしたら,いったいどうなっていたのだろうかと思ってしまったりすること。
なにやら常人の理解を超越した,人生のサンプルを見せつけられてしまいそうな予感がします。それだけに,その展示物を生で見てみたいなと思っていたりしているところです。多分怖いもの見たさです。
以上が,この展示物についての自分の「先入観」です。実物を目の当たりにすれば,また修正されるかもしれませんが。
キーワードにも詳しく解説されていますね。だいたい同じような印象に至っているみたいです。