本日の読書

軌道離脱 (ハヤカワ文庫NV)「軌道離脱(ジョン・J・ナンス著ハヤカワ文庫)」 ☆☆☆☆☆! これはツボにはまりました。おもしろかった。530ページもの濃くて長い内容にも関わらず苦にもならずあっというまに読んでしまいました。
このネット時代にさもありなんというストーリー展開(グーグルより極秘日記が偶然「検索されてしまう」くだりとか)も興味深い。また,宇宙飛行士でありながらも,その実,夢を心の奥底に秘めて抑圧したまま,本音と建前の世界で生きざるを得ない,という現代人の悲哀をもそっと語りの中にしのばせてくれていて,思わずうんうんうなずき共感しながら読ませてくれる箇所もふんだんにあります*1。なかなかどうして深みのある小説としても仕上がっています。
おおまかなあらすじとしては,ある日,平凡な中年会社員キップが,民間宇宙事業会社の懸賞に「当選してしまい」めでたく宇宙旅行に行くことになりました。それでさっそく宇宙船に搭乗して発射! 打ち上げられます。そして,青い地球をはるか眼下に見下ろしながら,大気圏外宇宙空間旅行まっただなかというわけになります。しかし,まもなく重大事故発生のため,パイロットはあっさりと殉職してしまいます。残された素人飛行士キップは,ひとり宇宙船にとりのこされます。そして,孤独との戦いになります。しかし,その孤独をまぎらすために,たまたま船内のパソコンに自分の内面を「包み隠さずに」手記を綴りつづけたところ,そのパソコンが実はインターネットに接続されていて,キップ本人が知らぬ間に,地球上ではつぎつぎとネット配信されてしまった,というわけで,そしてこの赤裸々な手記の内容が,すさまじい反響を呼び,全米のみならず全世界に「感動」と「パニック」をもたらしてしまう,というストーリーです。
ちなみに,この作品は,映画化もされる見込みとのこと。活字で読んで十分おもしろかったので,映画化したくなる気持ちも理解できます。楽しみです。
なんだか文法がぐちゃぐちゃな感想文です。
ついでに印象に残ったフレーズをメモ。

彼、一般大衆の心理的ダムみたいなものを破壊したのね。それはまちがいないわ。

*1:逆に考えてみると,アメリカ人も,なかなかどうして,「本音とタテマエ」のあわいの中で生きているものなのですね。日本人のだけのことではないのですね。