夕食の準備中

冷蔵庫の中にいれといた卵を一個取り出そうとして,ドア裏の卵収納棚にずらりと並んでいるうちのひとつに指をひっかけてつまんで取り出そうとしてみたところ,その卵が器の凹みにそってぴったりと強力に接着してしまっていて,びくともしない。ひっぱっても離れようとしない。まるでアロンアルファか何かを垂らしてくっつけたかのように強力に接着してしまっている。不思議なこともあるものだと思った。しかし,不思議だからといって,何日もこのまま放置しておくわけにはいかない。腐るだけだし。無理やりにでも撤去してしまおう。
それで卵と器の隙間へ指を差し込んで根こそぎむんずとつかんでえいと引きちぎってみたところ,案の定,卵の殻は無残にもぱりっと音立てて破けてしまって,黄身と白身がどろりとあふれて流れ出した。このまま落としてなるものかと,下に手を添えて垂れ落ちる中身の落下を受け止めた。すると白身の方は指のすき間をぬるっとすり抜けて床の上にばちゃっと落ちてしまった。そして残った黄身だけがぷりぷりっと張力を保ちつつ,掌の上に残ってしまって,なおかつ膜が破れもせず,美しい凸レンズ状を保っている。おお,さすが,放し飼いの地鶏が産んだだけあって,ただものではないようです。というわけで,その夕刻は,この頑丈なる黄身を攪拌して,ジンと混ぜて,ゴールデンフィズ作って飲むことに決定したのでした。
ちなみに,この卵が,卵入れにぴったり接着してしまってたのは,多分,殻に付着してた膠分が原因なのではないかと思います。これがなかなか強力な接着力で,卵本体をはがし取ったあとでも,殻の破片の一部がまだ器のあちこちに張り付いていて,その周囲は半透明なのり状の粘液が固まって付着してました。これがしつこくて,ちょっと爪を立てたくらいでは,なかなかはがれてくれません。ドライバーの先っちょでがりがりへじってなんとか全てはがし終えました。
卵って不思議。