船岡城址公園

宮城県柴田町山本周五郎著「樅の木は残った」の登場人物原田甲斐の居城址として,世に有名。春は桜の名所としても有名。
昭和29年,作品執筆取材のため,周五郎自身もこの城址を見学したとのこと。その当時の写真がこれ。坂道の中途に突っ立って,上り坂の向こうを見遣っているようにも見えるその和服姿が山本周五郎です。
自分が,10年くらい前,ちょうど宮城県仙台市に住んでいた頃,この船岡城址公園に,一度だけ観光しに行ったことがあります。そしてたまたま出発直前に,上記の,周五郎の写真を,何かの雑誌で見ていたのが,つい念頭にあったので,城址ふもとに到着してから,頂に至るまでの長い長い坂道を登りつつ,その該当場所をふと探してもみました。
しばらく道を登ってると,なんと周五郎が訪れた当時とほぼ同じ状態及び光景で,この年季の入った坂道が,目の前に立ち現れてくれたので,プチ感動したおぼえがあります。ちょうど,この画像で観るとおり,坂道が折れて,やや傾斜がきつくなっている様子も,まるで相似でした。間違いありません。
およそ半世紀まえ,周五郎本人が,「樅の木は残った」の想を練りつつ,突っ立っていたその箇所に,自分も立ってみて,なんとも,不可思議な心持ちでいまそた。かつて,この場所で,偉大な創造行為の一端が産み出されていたということ,そして,その証拠写真が,しっかりと写真で残されていること,そう思うと不思議な緊張感おぼえました。時間ははるかに違えども,しかし空間を同じうしているその感覚は独特のものです。こういうのも有名人ゆかりの地を訪れる楽しみのひとつなのではと思います(かといって,なにが人生にプラスするわけでもないのですが。・・・w) この日以来,自分の頭の中では,この細い坂のことを”周五郎坂”と勝手に命名してしまいました。
ただ,残念ながら,当時はカメラを持参していなかったので,10年前のその証拠写真をここに掲載することはできません。
しかし,あれから10年も経過してしまったけれども,この坂道は,当時と同じ風景を保っているだろうか。そういうわけで,もう一度この”周五郎坂”を訪れて,確認してみたいな,とも思うのだが,もしも,周囲が白いコンクリートでがちがちに固められていたりしたら,興ざめだなあ。見に行かない方がいいのかもしれなかったりして。
歩きに歩いて,上り詰めて,頂上に立つと,柴田町市街と白石川を見下ろすことができます。その景色も,なかなか美しかったです。いかにも,時間がゆったりゆったり流れている日本らしい田園光景で,眺めているだけでなんとなく気持が癒されます。ちょっとした散策にもおすすめでございます。