本日の読書

チャップリン再入門 (生活人新書)チャップリン再入門(大野裕之著,NHK出版生活人新書)」。以下メモ「成功争ひ」「ヴェニスの子供自動車競争」「犬の生活」「霊泉」「移民」「冒険」「キッド」「担へ銃」「巴里の女性」,高野虎市,「黄金狂時代」「モダンタイムス」「独裁者」,ヒンケル語,「ライムライト」
個人的に,チャップリンについては,意外と屈折した理解をしてきている。たしか高校の頃の英語のテキストで,チャップリン自伝の原文が採りあげられていたことがあったのだが,そのときの英語の先生が,露骨に「チャップリン嫌い」を表明していたことがあった。曰く,その動作及びユーモアがまったく好かない,おもしろくない,という個人的嫌悪によるものだったのだが,こういう先生に,チャップリンの英文の授業をされても,受けるほうの生徒としては,おもしろくも何とも無かった。
それと,かのミスタービーンで有名なローワン・アトキンソンによるVHSソフト「Rowan Atkinson's Guide to Visual Comedy」という,コメディーの教則ビデオ(?)の中でも,アトキンソン自身が,チャップリンの笑いに対して,ちくりと辛い批評を加えていたのもおぼえています。チャップリンがずばぬけた喜劇俳優であることは認めているものの,しかし,いかにも,そのぶりっ子過ぎてるキャラクターが,鼻につき,現在からすると,笑いのツボからずれている,古さを感じる,という意味合いだったように記憶してます*1
それと,たしか,色川武大さんのエッセイでも,同時代喜劇俳優の,バスターキートンの方を持ち上げる一方で,チャップリンの方にはあまり筆を費やしていない内容のがあったやうに記憶してます。もちろん,実人生でも王道を歩むことの出来たチャップリンに比べて,キートンは,生前から”冷遇された”ひとでもあるわけで,したがって,積極的にオマージュをささげなくては,という意図が,色川さんの内にあったからこそ書かれた文章だったと思うのだが。
上記のそれやこれや紆余曲折のおかげで,どちらかというと,肝心のチャップリンに対する,率直な記述によるレビューと言うものに接したことが無かったわけです。そういう経緯だったので,この「チャップリン再入門」は,チャップリン映画の持っている普遍的な魅力を,率直なことばでストレートに語ってくれてるので,たいへん新鮮な気持で読めました。”再入門”というタイトルにふさわしい読書感でそた。これをみちしるべにして,いま一度DVD等をレンタルしてみるのも乙ではないかと。

*1:もちろん,これは,”ミスタービーン”という,かなり毒のあるキャラクターを別途導き出すための伏線でもあったとは思うが。