本日の読書

偏食的生き方のすすめ (新潮文庫)「偏食的生き方のすすめ」(中島義道新潮文庫)なんとも気難しい哲学の先生の手記のようなもの。とにかく食べ物の好き嫌いが激しい。たとえば,牛丼は食べられない,御飯の上にごっそり肉が載っているのが嫌だ。ウナギの蒲焼もダメ,蛇を連想させるから。鶉の卵は食べられない,なにやら爬虫類の卵みたいだからだ。などなどなにかと難癖をつけて嫌いな食べ物を本文中で罵倒しまくりやりまくり。そして著者はその態度をけっして変えようとはしない,なにが起きようとも,仮にその嫌いな食べ物をうっかり口にしてしまった場合でも,そしてそれが何なく喉を通ってしまったとしても,やはり嫌いな食べ物は嫌い,今後好きになることは無いという激しい調子です。
もっとも,著者がこのように食わず嫌いが激しい理由を,その食べ物に対して,すぐに観念的な強い枠組みをぱっと当てはめてしまうからだと,一歩距離をおいて分析されているのがおもしろい。要するにたとえば,ウナギを見て,すぐに”蛇”という観念的な枠組みを固めてしまう気質があるのですね。そうなるともう食べられない。そしてそこでいったん固めてしまった観念は終生固持しつづけることになってしまう。なるほどなるほど。
こういう辛口タイプの食べ物本(?)初めて読みました。食べ物の話だけではなくて,身辺雑記めいた記述も多いけれど。
まあ,食わず嫌いというのはジャンルを問わずありますな。いいのですいいのです。